おはようございます、鳥井修です。
日銀は16日、日本で初めてのマイナス金利政策を開始した。金融機関が日銀にお金を預ける当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を課す仕組みで、金融機関が融資や投資にお金を振り向けるように促す。ただ海外要因による市場混乱が続くなかで、日銀の思惑通りにお金の流れが活発になり、景気や物価を下支えできるかは未知数だ。
16日の市場では、金融機関同士が1日だけ資金を融通し合う翌日物取引で前日の平均値0.074%から急低下し、0%の金利が付いた。「マイナス金利政策が始まり、市場でのお金の運用が増える」という思惑から金利が大幅に低下した。日銀が2001年に導入した量的緩和政策を解除する直前の06年2月以来の低水準だ。
期間の短い金利の低下で、期間の長い金利も押し下げられた。長期金利の指標になる10年物の国債利回りは前日比0.045%低い0.04%まで急低下した。
マイナス金利政策の主な狙いの一つは金融機関が融資や投資を増やし、お金の流れを活性化することだ。
メガバンクでは三井住友銀行が先陣を切って16日から住宅ローン金利を引き下げ、三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行も追随する見通しだ。
建設費の高止まりで販売が鈍る不動産業界ではマイナス金利政策の波及効果に期待が高まる。三菱地所の「ザ・パークハウス花小金井ガーデン」(東京都小平市)のモデルルームは来客が好調。14日に訪れた30代男性は「住宅ローン金利が下がりそうなことが検討の後押しになった」と話す。
投資資金も相対的に高い利回りを確保できる不動産市場に流入。東証REIT指数は16日、前日比2%高と2日連続で上昇した。ただ資産運用では副作用もみられる。国債利回りの急低下で、運用会社10社が短期国債などで運用するMMF(マネー・マネージメント・ファンド)の購入受け付けを停止した。
年明けから強まった円高の流れに歯止めをかける狙いもある。国内の金利が大幅に下がれば、海外の金利と差が開き、円から外貨に資金が流れやすくなる。ただマイナス金利政策の発表後、円相場が一時、1ドル=110円台に上昇するなど、現時点では十分な効果は表れていない。
直近の当座預金の平均残高から試算すると、マイナス金利の対象になる当座預金は1割弱の20兆円超にとどまる。日銀はこの規模でも十分な効果が表れると見込むが、円高・株安の抑止効果については不透明だ。
経済界の評価も定まらない。経済同友会の小林喜光代表幹事は16日の記者会見で「マイナス金利政策で円安や株高になったのは政策発表後の2、3日だけ。相場が乱高下する状況で投資をする、しないをすぐには言えない」と指摘。現段階では波及効果が限られるとの見方を示す。
日銀の大規模な金融緩和は安倍政権の経済政策アベノミクスの柱として日本経済を支えてきた。だが原油急落などによる年明けからの市場混乱で「放置すればデフレ脱却の流れに水を差しかねない」との危機感が浮上。異例のマイナス金利政策の成否は、脱デフレの流れを呼び戻せるかの試金石になる。
2018-11-15
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