おはようございます。鳥井修です。
さて、昨日、96兆3420億円と過去最大の2015年度予算案が決まった。今後、各地方自治体は国の予算を受け、来年度の予算について各議会での審議が始まる。
安倍政権では赤字を減らす目標の達成に道筋をつけたものの、昨春の消費増税や企業からの法人税が増えた恩恵に頼る。社会保障の支出を抑えて税のしくみを変える努力はなお足りず、痛みを伴う改革が不可欠。アベノミクスは3年目、成長も財政の立て直しも長期戦に入る。
国と地方の借金の残高は15年度末に1035兆円に膨らむ。それでも財務省は改善点を訴える。税金の入りはいままでの実績に比べると24年ぶりの高い水準。国債を出しての借金は毎年度の新たな予算案として6年ぶりに40兆円を下回る。
政府には政策につかう費用を税金など実際の収入だけで賄えない、いわゆる「基礎的財政収支」の赤字の規模を減らす目標がある。10年度に国・地方で名目の国内総生産(GDP)の6.6%あった赤字は15年度予算で3.3%と「5年で半減」の中間目標を達成する見通し。
予算全体が0.5兆円近く膨れながらも赤字が減るのは、税金の入りが4.5兆円も前の年度を上回るから。消費税は税率8%での収入が丸1年分入って1.8兆円増。企業のもうけや給料が増えて法人税や所得税が2.6兆円も増える。
陰の支え役は日銀だ。デフレ脱却のための量的緩和策で経済の底上げに貢献した。日銀から国庫に納めるお金も0.2兆円増やす。日銀は大量の国債を買って財政への不安も和らげている。10年物の国債利回りは14日、0.250%と過去最低になった。予算案の想定より1.5%以上も低い。金利反転のリスクとも隣り合わせ。
国の支出では宿題が目白押しだ。政策にあてる費用の4割を占める社会保障費は、高齢者が増えて医療サービスが高価になる「自然増」だけで15年度は0.4兆円も増える。介護サービスの業者に払う介護報酬の減額などで自然増自体を半分に抑えたのは成果といえる。一方で医療や年金の抜本改革は手つかず。
消費税率10%への増税を1年半延ばしたこともあり、民主党政権の時に与野党で決めた「社会保障と税の一体改革」は勢いが鈍い。子育て支援を積み上げたのはよいものの、高齢者に手厚い給付を抑えたり年金の支給開始を遅くしたりする対策も要る。「社会保障費が3%も増えていては、仕組みは長持ちしない」。
政府には20年度に基礎的財政収支を黒字にする目標もある。消費税率を15年秋に10%に上げても10兆円以上足りない計算だった。社会保障を一段と切り込み、追加増税も必要になる。達成しても借金残高はまだ増える。
税も宿題だらけ。法人税の実効税率の引き下げで前進したとはいえ、税金を払わない中小企業への課税や、女性の社会進出を促す所得税の見直しはこれから。
危うさを伴う日銀の緩和策をはじめ、アベノミクスの目先の効果をあてにする局面は過ぎた。岩盤のように堅い規制を切り崩す「第3の矢」の改革で日本経済に潜む力を高めるとともに、若者たちに重いツケを残さないための痛みの改革を正面から問うべき。経済再生に回り道はない。
2018-11-15
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